叶う。 Chapter1
“いや、話したくないとかそういうんじゃないんだよ。ただ、大事な話だからあった時にと思ってさ。それよりもかなう明日学校来れそう?”
「うん、多分大丈夫。」
“じゃあ、ちょっとだけ俺に付き合ってくれない?”
「・・・え?」
“色々と話したいし、帰りでも良いんだけど”
私は少し考えて、明日がピアノのあることに気付いた。
「ごめん、帰りは無理。」
“そっか、じゃあ学校さぼっちゃう?”
和也は少し楽しそうに、そんなことを言う。
「・・・うん?」
“かなうが嫌じゃなきゃ、学校さぼってちょっと話さない?”
その誘いは平凡な毎日を過ごす私に、ほんの少し刺激的な魅力を感じる響きだった。
それに、昨日の事もきちんと顔を見て謝りたいとも思った。
「うん、大丈夫。どうしたらいい?」
“かなうって電車で来てるの?”
「うん、そうだよ。」
“じゃあさ、学校の駅に着く前に連絡してくれる?”
「うん、分かった。」
“じゃあ、待ってるな”
「うん、あの・・・・和也・・・。」
“うん?”
「色々とごめんね。」
私がそう言うと、和也は電話越しに笑った。
優しく吐き出された吐息が、耳に微かに聞こえた。
“かなうは、色々謝りすぎ”
そう言われて笑われたけれど、なぜか不思議と安心した。