叶う。 Chapter1
ホームから階段を下りると、直ぐに改札が見えて来た。
私の緊張は既にピークを迎えていた。
何故か駅員さんの視線すら気になって、とても不安に感じて少しだけ俯き気味に改札を抜けた。
「かなう!」
改札を抜けると直ぐに私を呼ぶ声がして、私はつられて顔を上げた。
声がした方向に視線を向けると、電柱を背に立っている制服姿の和也が居た。
一昨日と同じ、優しい笑顔を浮かべたその姿を視界に捕らえると、さっきまでの不安は直ぐに消えさった。
「おはよう。」
とりあえず普通に挨拶をしてみたけれど、なぜか不安の代わりに恥ずかしい気持ちが込み上げてきた。
和也はそんな私に気が付かないのか、しっかりと私を見つめたまま、ゆっくりとこちらに向かって歩み寄った。
「おはよう。具合大丈夫か?」
「うん、心配かけてごめんね。」
「いやいや、治って良かったよ。」
和也はそう言って優しく笑った。
「とりあえず、行こうか?」
「う・・うん。」
和也はそう言って、学校と反対の方向にゆっくりと歩き始めた。
この前みたいに、手を繋がれなかったことに少しだけ安心する。
なぜなら通学時間帯なので、同じ制服を着ている人達をちらほら見かけたからだった。