叶う。 Chapter1
制服姿の和也の後ろ姿をじっと観察しながら、その少し後ろを歩く。
制服のブレザーにマフラーを巻いて、両手をポケットに入れて歩いているその後ろ姿はこの前並んで歩いていた時と、また違って見える。
いつも大きな兄達を見ているせいか少し華奢に見えるその背中は、それでも同級生に比べたら広くて大きな背中だと思う。
時折ちらりと振り返ってこちらに視線を向けてくれるけれど、私達は特に会話という会話はしなかった。
10分くらい歩いただろうか。
もう学校からもすっかり離れているので、同じ制服を着た生徒とすれ違う事もなくなった。
和也が何処に向かっているのか、ほんの少し不安になった。
私はそんな不安を思い浮かべないように、黙々とその後ろを歩いた。
「この辺まで来れば大丈夫かな?」
和也はそう言って突然立ち止まった。
ぼーっと歩いていた私はその行動に対処するのが遅れて、そのまま和也の背中に向かって突っ込んだ。
「いた・・・た・・。」
おもいっきりぶつけた鼻が痛くて思わず両手で鼻を押さえた。
「大丈夫!?」
和也はそう言って私の両手を掴むと顔から離して、顔を覗き込む。
その行動に更に恥ずかしさが込み上げた。
「大丈夫、大丈夫だよ。」
慌てて早口でそう言ったけれど、和也はそんな私にお構いなしに指先で私の鼻に触れた。