叶う。 Chapter1
温かい指が鼻先に触れると、思わず顔が赤くなるのが分かった。
「赤くなってる。」
その行動に何の意味もないものだと、きちんと分かっているけれど、突然触れられるとやっぱり焦ってしまう。
「だ・・・だいじょ・・・ぶ。」
私はそう言って、無意識に和也の手を振り払ってしまった。
「ごめん。」
和也はそう言って、振り払われた手を下げた。
一瞬、気まずい空気が流れる。
「急に触られたら普通に嫌だよな。」
和也はそう言って少し悲しそうに笑った。
私はその表情を見て、咄嗟に早口でこう言った。
「ち・・がうの・・・あの・・・びっくりしちゃって、触られるのが嫌とかそういうのじゃないの。」
自分でもなんて言っているのかよく分からない。
「あのね、私・・・違うの、ほんとに。」
思わず身振り手振りで必死に説明しようと躍起になっている私に、和也は次第に笑顔になる。
「かなうってほんとに可愛いw」
そう言ってクスクスと笑う。
私は和也が笑顔になってくれたので、正直ほっとした。
自分の行動で相手を不快な気分にさせるのは、とても嫌だったし、何よりも自分自身も嫌になる。
だから普段はそんな事にならないように注意を払っているけれど、何故か人懐っこい和也の行動は予想が出来ないので、自分自身も混乱しがちだった。