叶う。 Chapter1
人を好きになる気持ちは私には分からないけれど、きっとそれはすごく素敵な事なんだと思う。
現に和也が私を見つめる瞳は、綺麗な色を帯びていて、とても優しい。
こんな色の瞳を見たことがなかったから、何だかすごく新鮮な気分だった。
「そう言えば、かなうって兄さん2人とママさん家族なの?」
買ってきたお菓子を開けながら、和也がそんなことを言う。
「うん。」
「ママさんめっちゃ美人だよな。」
「・・・うん。」
「何してる人なの?」
「うん?」
「ママさん。」
「・・・経営者みたい。」
「・・・ん?何の?」
「あ、あの・・・夜の仕事だよ。」
「へぇ、すげぇな。あの若さで経営者か。」
「・・・・。」
和也はお菓子を食べながら何でもない風に、そんな事を話す。
私は必要な情報以外の回答はしたくなかったので、ついつい声が小さくなってしまう。
だけれど、和也はそんな私をあまり気にしていないようだった。
「食べる?」
そう言って、自分の食べてるお菓子を私の口の前に差し出した。
私は無意識に口を開いた。
お菓子を口に入れられると、それはとっても甘くて美味しいクッキーだった。