叶う。 Chapter1
/凛
両親に愛されて、何不自由なく育ってきた和也だから、きっとこんな風に誰にでも優しく接する事が出来るんだろう。
それに比べて自分の過去をほんの少し思い出し、憂鬱な気分になった。
だから私はそれを悟られないように、話題を変えることにした。
「そう言えば、凛もう学校行ったかな?」
「ん?もう10時か、かなうと居ると時間経つの早いな。」
和也はそう言って、胡坐をかいたまま身体を前にペタンと倒す。
私はその身体の柔軟さに驚いた。
「身体、柔らかいね。」
私がそう言うと、和也は腕を伸ばしてから起き上がった。
「ダンスの基本だからな。」
和也はそう言って、優しく笑った。
「そう言えば、凛の話しないとな。」
「うん?」
「昨日の話。」
「あ・・・うん、差し支えなければ・・・。」
「いや、むしろ聞いといて欲しいかな。」
和也はそう言ってベッドの壁側に移動して、壁を背にして足を伸ばした。
そして私を見つめて、自分の隣をポンポンと叩いた。
何となくそこに来るように言われた気がしたので、私はその場所に移動した。
二人並んで座ると、何だかさっきよりも近い距離にほんの少しだけ緊張した。
私が隣に座ると、和也はさり気無く私の腰の辺りに腕を回した。
一瞬ドキリとしたけれど、何かする気配は感じられなかったので、私はそのまま黙って和也の話に耳を傾けた。