叶う。 Chapter1
家で過ごすのと全く違う。
凛も和也も変に飾らない、ごく自然なその空気のおかげなのかもしれない。
正直家に居るのは好きだし、家族の事も大切に思っている。
こんな私を引き取って、普通以上の暮らしをさせてくれているし、多分本当に私は運が良かったんだろうと思う。
ママには愛されていると思うし、兄達もなんだかんだ言ったって私を大切にしてくれている。
だから我侭なんて言わなかったし、不満だってもちろんない。
だけれど私の家は完璧すぎるのかもしれない。
元々いい加減な環境で育った私には、完璧すぎる我が家は正直息が詰まる時がある。
それがどれだけ贅沢で、自分勝手な考えなのかはよく分かっているつもりだし、もちろんそれを態度で出すこともなければ、我侭だって言わない。
だけれど成長と共に、完璧すぎる兄達と私の差は広がるばかりで、だから私は唯一得意であるピアノをずっと続けている。
それだけが私にとっての自分自身を保つための術だったのかもしれない。
だけれど和也や凛と一緒に居ると、なぜかほんの少しいつもと違う自分になれる気がする。
それは私にとっては大きな変化であり、とても自由なこの空間になぜかすごく安らぎを得ていた。
だから、こんな風に楽しいと感じたりするんじゃないかと思った。