叶う。 Chapter1
「そう言えば……ダンス始まるの遅いんだよね?」
私はふと思い出して、和也にそう言った。
私はこの電車を降りたら、直ぐにピアノに向かわなきゃいけない。
和也はいつもならこんなに早く出掛けないんじゃないかって、今更ながら気付いた。
「あぁ、遅いけど。」
「私、着いたら直ぐピアノに行かないと…。」
「うん?知ってるよ。何時ごろ終わるの?」
「多分、6時ぐらいかな?」
「了解、その頃に迎えに行くな。」
「え?」
「ん?」
「迎えなんて、大丈夫だよ?」
いつもピアノが終われば真っ直ぐに帰宅するので、なんでそんな面倒な事を和也がするのか分からない。
私が住む場所は繁華街だから、和也は偶々用事でもあって一緒に来たのかと思っていたので、その答えに疑問を持った。
「迎え行ったらダメなの?」
「え……ダメじゃないけど……。」
「俺、7時半まで暇だし。」
「え?じゃあなんでこんなに早く来たの?」
「なんでって?かなうと少しでも一緒に居たいからだよ?」
「そ、そうなの?」
私は驚いて和也を見上げた。
「ひょっとして迷惑だった?」
「め、め…迷惑なんかじゃ、ないよ!」
悲しそうな瞳でそう言われたので、慌てて否定する。