叶う。 Chapter1
だけれど、私はちゃんと言葉を選んで先生に伝えた。
「先生のお陰です。いつもありがとうございます。」
そう、先生はどんな時でも一生懸命に私に指導してくれた。
厳しい時もあるけれど、こうして私がピアノを続けて来たのは先生が指導してきてくれたからだ。
色々あって、多少前よりも上達したのかもしれないけれど、それでも先生が居なかったら私はきっと上達しなかっただろう。
その後はいつも通り、何度か間違えやすい箇所やリズムの再確認なんかをして、この日のレッスンは終わった。
先生に帰り際、曲の変更を考えてみないかと言われたけれど、私は丁寧に断った。
ここ数日で、すっかりこの曲が気に入っていたのももちろんあったし、何よりも新しい曲になるとまた最初からイメージをする事が、難しいと思ったからだ。
ママも先生も、なぜかショパンが好きなので、私は時間が出来たら今度はショパンを練習しようと心に誓った。
「ありがとうございました。」
「またね、アンナ。気をつけて帰りなさい。」
玄関に見送りに来てくれた先生と挨拶を交わして、私は振り返って門を開けた。
「おかえり。」
顔を上げると、少し離れたところにその人の姿を見つけて、私は自然と顔が綻ぶ。
私は直ぐにその人の所に駆け寄った。