叶う。 Chapter1
ファーストフード店を出ると、和也は少し急ぎ足で真っ直ぐに私の自宅であるマンションに向かった。
時間もギリギリだったし、私達は特に会話らしい会話も出来ずに歩いた。
だけれど、しっかりと手を繋いで居たので私はそれだけで充分満足だった。
「よし、じゃあまた明日だな。」
私のマンションに辿り着くと、和也はそう言って私の頭に手を置いて、優しく髪を撫でる。
「うん、ありがとう。また明日。」
私はしっかり和也と向かい合って、視線を合わせてそう言った。
「明日は朝から学校来る?」
「うん、いつも朝から行ってるよ。」
「じゃあ、駅まで迎えに行くよ。一緒に行こうぜ。」
「・・・う、うん。」
一瞬返答に困ったけれど、和也はそんな私には気がつかない様子だった。
正直今日みたいに、学校の生徒にジロジロ見られるのは嫌だったけれど、それを伝えるのは私には難しかった。
「じゃあ、また駅着くくらいに連絡入れて?」
「うん、分かった。」
一瞬の沈黙。
目が合うと、自然と和也との距離が近くなる。
だけれど、私は咄嗟に視線と顔を逸らした。
和也は一瞬少し怪訝な顔をしたけれど、直ぐに察してくれたようだった。
先程から、守衛の岸谷さんの視線を感じていたのだ。
岸谷さんは良い人だけれどお喋りなので、こんな所でキスなんてしようものなら、明日にはママの耳に入ってしまうに違いない。