叶う。 Chapter1
熱めのお湯を頭から浴びると、途端に身体が温かくなってすごく心地がいい。
いつも通り、石鹸を丁寧に泡立てるとそれで全身を包み込むように洗う。
柑橘系の仄かな香りに全身が包まれると、私はふと和也の言葉を思い出した。
私が使っているこの石鹸は、もう随分昔からママのお気に入りでいつも大量にストックしてある。
種類は2種類あって、リキッドタイプと固形の石鹸タイプ。
私は自分で好きなだけ泡立てる事が出来る固形タイプがお気に入りだけれど、時間がないときなんかはリキッドを使う事もある。
そして何よりこの石鹸のいいところは、これだけで頭の先から爪先までいっぺんに洗えるというところ。
便利だし、面倒くさがりな私はとても重宝している。
バスルームにはもちろん他の種類の石鹸やシャンプーなんかもあるけれど、私はいつもこの石鹸を使っていた。
もこもこに包まれた全身をシャワーで洗い流すと、私は身体が冷めないうちにバスルームを出た。
全身を綺麗に拭いて、下着とパジャマを身につけるとストックしてある石鹸を一つ取って直ぐに部屋に戻る。
静まり返った家には誰も居ない事は明らかだけれど、この前みたいな目にあいたくなかった。