叶う。 Chapter1
部屋に戻ると、私は鏡台に座って長い髪を乾かす。
生れつき栗色のその髪は、水を含むとなんだかメープルシロップみたいな色になっている。
なんだか地味なその色に、ほんの少しだけ変化を求めたくなった。
それは多分、今日会った和也の友達や、凛に晃や愁の影響もあるんだろうけれど、何となく髪を染めてみたくなった。
シオンやレオンのように、生れつき綺麗なシルバーブロンドの髪だったら、きっとそんなことを考える事もないんだろうと思うと、やっぱり出来損ないの自分が嫌になる。
だけれどたまには自分の髪色を変えてみるのも、気分転換になるのかもしれない、と私は密かに思った。
髪を丁寧に乾かして梳かすと、私はそのままリビングに向かう。
いつものように水を取り出して喉を潤すと、そのまま防音室に向かった。
眠る前にピアノに触るのは毎日の習慣になっていて、私はいつもと同じく暫くピアノの練習をする。
防音室はその名前どおり、外からも中からも音が漏れないような造りになっているので、夢中でピアノを弾いていると気付かないうちに誰かが帰ってきていることもある。
だけれど、帰ってきたとしても特に何かあるわけじゃないので私は集中してきっちりとピアノを練習した。