叶う。 Chapter1
なぜ、母が死んだのか。
幼かった私には分からなかったけれど。
ただ記憶にあるのは、母の死体を目の前にした時。
“これで開放された”
と、思っただけの冷めた自分に物凄く嫌悪感を抱いたことだけ。
たとえどんな子供でも、母親の死体を目の前にしたら、きっとそんな風に感じる事なんてないだろう。
だけど私は、叫ぶことも、悲しむことも、泣くことすらせずにただ母の死体の傍で、膝を抱えて蹲っていたらしい。
それは傍から見たらさぞかしおぞましい光景だったろう。
通報者はお隣さんだったらしいけれど、そんな光景を見せられたお隣さんには、今となっては心底同情する。