叶う。 Chapter1
その日は兄達は学校に行っていたから、家にはママと二人だった。
コールはすぐに鳴り止んだから、きっとママが取ったのだろうと思い、私はそのまま防音室に向かった。
ピアノのカバーを外し楽譜を用意していると、ママが険しい顔で防音室の扉を開けた。
「・・・アンナ、ちょっと良いかしら?」
私はママの顔を見た。
「アンナに会いたいって、人が来ているけれどどうする?」
一体誰なんだろう、と思ったけれどママの表情からそれは良いお知らせでない事は確かだと思った。
「誰が来てるの?」
「校長先生と担任の先生と、クラスの長谷川さんのご両親よ。」
「・・・・わかった、行くね。」
「大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。」
正直誰にも会いたくなかったけれど、学校の先生が来ているなら迷惑を掛けてしまったことを謝らなくてはいけない、とただ純粋にそう思った。