叶う。 Chapter1
ママのその言葉に、おそらく夫婦であろう二人がゆっくりと顔を上げる。
校長先生と担任はほとんど空気だった。
私はその夫婦に視線を移した。
会った事はないはずだけれど、どことなく見覚えがあった。
そう、名前も知らないクラスメイトのあの子の面影を感じる。
「どう処分をするおつもりですか?」
ママの声音は相変わらず冷たい。
「はい、どんな責任でも果たすつもりです。なのでどうかここは示談ということにはしていただけないでしょうか?」
おじさんの声は微かに震えていた。
ママは私の肩をさらにぎゅっと掴んだ。
「・・・・それはどういう意味ですか?」
「こうなってしまったことに言い訳は出来ません。私共の愚女がお嬢様に耐え難い傷を負わせてしまったことは事実です。それはもちろん私共の監督不行き届きであることには違いありません。」
「・・・・・・。」
「しかしながら、同じ娘を持つもの同士お分かり頂けると思いますが、どんな事をしでかしても娘は娘なのです。私共にとってはたった一人の娘なのです。」
「・・・・それで?」
「ですので、どうか穏便に・・・。」
おじさんはそこまで言うと、わきに置いた金属性のアタッシュケースをすっと差し出すように押した。