叶う。 Chapter1
急にふられてどうしていいか分からなかった私がとった行動は、とにかく沢山の人に迷惑を掛けたことへの謝罪だった。
「いえ、こちらこそ、そこまで不快な気分にさせてしまっていたのに、気付かなくてごめんなさい。」
私はそう言って、夫婦に頭を下げた。
そう、多分悪いのは相手だけじゃない。そこまでの恨みを買うほどだったのだから、きっと私にも自分では分からないけれど原因があったんだろうと思った。
それにさっきから頭を下げ続けるこの夫婦がなんだか不憫に思えた。
そんな私の謝罪に、ママは飽きれたように溜息を吐いた。
そして未だ土下座を続けている夫婦に向かって冷たくこう言い放った。
「・・・家の娘は優しい子です。お宅の娘さんとは違います。この子は誰かを傷つけるような事は致しません。お引取りを。」
ママはそれだけ言うと、私にリビングに行くように言った。
私はゆっくりとリビングに向かって廊下を歩いた。
「月島さん・・・。」
背後から、今まで空気のような存在だった担任の声が聞こえた。
「お引取りを、と言った筈です。今後は弁護士を通して頂きます。示談には応じる気はございません。きちんと罪を償って頂きます。」
ママがそう冷たく言い放つ声を聞きながら、私はリビングの扉を開けて、中に入ってその扉をそっと閉めた。
もう、何も聞こえては来なかった。