叶う。 Chapter1
結局、ママがその後どうしたのかは分からないけれど、クラスメイトの長谷川さんは警察に捕まったらしい。
私はママに連れられて、何度か警察や裁判所に足を運んだ。
質問されることは、ママと弁護士さんが予め答えを用意してくれていたので、あくまでも教えられた通りに淡々と答えた。
“長谷川加奈(ハセガワカナ)”
この事件の首謀者だった子の名前だった。
なぜ長谷川さんが、私に対してそんな事を企てたのかは私には理解が出来なかった。
なぜそんな事をしたのか、という問いに彼女はこう答えたらしい。
「あの子の泣く姿が見たかった。あの子は虐められても暴力を振るっても泣かなかったから。」
そんな事なら、泣けば良かったと思ったのを覚えている。
ただ、それだけの為にそこまでした彼女の気持ちは理解出来なかったけれど、私が泣けばこんな大きな事件が起こらなかったと思うと、なんとなく申し訳なくなった。
私にとって、涙を流すことは難しいけれど、どうにかして泣いていればこんな目に合わなくて済んだのかと思うと、感情を上手に表現出来ない自分が情けなかった。
だけれど、後からそんな事を考えるのはもう手遅れなので、私はもうそれ以上考えなかった。