叶う。 Chapter1
発表会が近いからか、最近の先生はちょっと神経質気味だった。
会う度に優勝と言われ続けることには、ちょっとうんざりだったけれど、それも仕方ないのかもしれない。
私は去年、入賞はしたけれど、惜しくもグランプリを逃してしまったのだから。
グランプリなんて私には興味がないけれど、今まで何人もに賞をとらせてきた先生にとって、それは必要な実績なんだろう。
「ありがとうございました。」
私は楽譜を鞄にしまうと、先生にお礼を言った。
そして先生に見送られながら、ピアノ教室を後にする。
週に4日、2時間ずつ。
私はこの教室に通っている。
結構ハードだけれど、辞めたいなんて言わないし、言えない。