叶う。 Chapter1
だけれど、私は大きな間違いをおかしていたことに気付いた。
分厚い本をパタンと閉じた男は、さっきよりも更にニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべてこう言った。
「日本語わかってるじゃねぇか。」
そう言って私を見下ろして、逃がさないとでもいうように腕を掴んできた。
そう、私が買ってきたのは日本語で書かれた本である事にその瞬間気付いた。
「・・・離して下さい。」
「んー、お嬢ちゃん嘘はダメだよ、嘘は。」
「離して。」
「ダーメ、僕傷ついちゃったもんね。泣いちゃうかもよ?」
「・・・・。」
「ちょっと慰めてくれたら離してあげる。」
手を振りほどこうと引っ張ってみたけど、私の力じゃびくともしない。
そんな私の姿に男は逆に私を引き寄せるように引っ張った。
「ちょっとだけ遊んでくれたら許してあげる。」
呼吸が聞こえそうなほど近い距離で、男はそう囁いた。