別冊☆海宝堂*短編集*
トイス王国第一王位継承者であり、カイルの姉であるシルフェリア王女が国を出る時、たった1人の王女を止めるのに、護衛隊が誰一人その体にすら触れることが出来なかったことから、ジムはそれを恥だと感じていた。
ジムはすぐさま護衛隊総隊長であり、父親でもあるポムに、一から武術の指南を仰ぎ、それと並行して、国の誰にでも通う権利のある武術学校の設立に尽力を尽くした。

半刻ほど前、その武術学校の子供達が泣きながらマーリンに助けを求めてきたのである。

「ジムせんせいとカイルおうじが、けんかして、なぐりあってるの!」

しゃくりあげながら必死の言葉に何事かと駆け付けると、大泣きする子供達の目の前で、防御や武術の型なんか無視して殴りあっている2人に、マーリンは大きな溜息を吐いた。

事の始めは、ジムの教えている子供達の授業をカイルが覗きに来たことだった。

やれ、顔が怖いだの、言葉が堅いだの、横から口を挟んでくるカイルにジムの怒りが頂点に達するのも当然だった。
< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop