myst
無題
取引先で親しくしている方を訪ねたところ、彼は自分の荷物やファイルをダンボール箱に詰めてデスクを片付けているところだった。

「どうしたんですか?」と聞くと「連絡出来なくてすみません。会社、辞めることにしたんです」と言う。

話を聞くため彼をコーヒーに誘ったがそれを断り、逆にオフィス内の喫煙室を勧める。

「私また禁煙に失敗しましてね」

――彼は僕より3つ年上で、業者にも心遣いをする優しい男だった。僕と初めて会った時は彼の禁煙は3ヶ月を迎えており、妻がうるさくてね、と照れながら言っていたのを覚えている。

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