myst
「昨年の夏辺りから体の不調を感じるようになったんです。CTなどで検査はしたがどこにも異常はなかった。しかし頭痛と倦怠感は続いたんです」

「それはもしかしたら、何か精神的な…「もちろん心療内科にも行きましたよ」

彼は僕の言葉の結びを待たずに少し笑顔で話を続ける。相手が言い出しづらい事を言わせずに察するという、彼ならではの気遣いだ。

「ひと通りカウンセリングを受けて薬を貰い、しばらく服用を続けました。あれって副作用でとても眠くなるんです。…あ、カウンセリングを受ける時に画用紙を渡されて木の絵を自由に書いてください、て言われるのを君は知ってるかい?私は昔から絵が苦手でね」

彼はやれやれ、という仕草でおどけるような顔をしてみせた。僕はどうしたらいいか分からず、あいまいに笑った。
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