myst
「…パズル、ですか?」

「そう、パズル。よくモナリザやノイシュバンシュタイン城がパズルになっている、あれですよ」

「いいえ、僕はやらないですが」

僕は正直に答える。しかしその質問への返答は彼にとってどうでもいいように思えた。

「あれはピースをなくすととても厄介でね」

彼は緑色のビックのライターを手で転がしながら言った。

「せっかくあと少しで完成って時にピースがいくつか無い事に気づくんです。もう大変ですよ。絵が欠けていてはパズルとしての意味がないですからね。妻や子供にも探してもらうんですが、どうしても1つだけ見つからないんです。たった1つでも隙間があると飾れないじゃないですか。不思議とピースを無くすのはいつも1つ」

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