【短編】続・過多想い
お化け屋敷を出るとすぐ目の前にあった観覧車に
手を繋いだまま乗り込んだ

乗り込む時にようやく離した手

俺の手には温もりと柔らかさだけが残った

無邪気に外を眺める多々良


俺はゆっくりと多々良の隣に座った


「あんまり思わせぶりな事すんなよ?」

「えっ?」

「勘違いすんだろ?」

「意味わかんないよ?」

多々良ってめちゃめちゃ鈍感かよ


「もういいわ」

俺は自分の席に戻った


告ろうかと一瞬思ったけど
告ったら全てが終わりそうだ

俺ってこんなに意気地なしだったっけ?


多々良を好きになって

心もペースも乱れまくりだ


俺の事こんなに振り回す女は
きっと多々良1人だろうな

でも、愛おしくて仕方ない


今は近くでいられるだけで良い



観覧車から降りて

ワンダードロップに乗った



水しぶきがかかったけど

火照った心を冷ますにはちょうどいい



ワンダードロップから降りて
ベンチでジュースを飲んでいると

たまたま陽大と楠瀬と再会した


「健太~もう大丈夫か?」

「おう、心配かけたな」

楠瀬と多々良はキャーキャー喋ってる


「おまえらはお化け屋敷行った?」


「行ってねーよな?」

楠瀬が顔を青くして頷いた

楠瀬も苦手なんだ


「まぢすげーぞ!!」


「すっごーく怖かったよ」

多々良は思い出したのか涙目になってる


「陽大行こうとか言わないよね?」


「あれは言っといた方が良いな」

ニヤリと笑った俺に陽大は何かを理解したらしく
強張る楠瀬に

「どうせ大した事ないって」

そう納得させて連れて行った


「あぁ~あ、心愛もお化け屋敷苦手なのに~」


「多々良もまた行ってみる?」

まぁ行かないだろうけど…

「一度入ってるしもう怖くない」

本当負けずぎらいだなぁ

「あれだけ怖がってたくせに…まぁ無理すんな」

頬をまた膨らませた

俺の悪戯心がくすがれる

でも、またあんな事になったら…
もう俺は止められる自信がない
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