甘くて、苦くて、それが恋【超短編集】
甘い
キスしてなんて言えないなら
キスして、なんて可愛いセリフが言えなくて。
付き合ってから三ヶ月。
いまだに、キスはしていない。
はあ、とため息を吐いたところで。
スッとジュースが差し出された。
「まだまだ、気温高くて、暑いよね。
これ飲みなよ。」
ニコッと微笑みながら優しい眼差しを向けてくれるのは、私の彼氏。
「…ありがとう。」
気が利かないわけではないから、ただ鈍感って訳じゃないんだよね。
そう思いながらジュースを一口。
「あ、間接キス。」
「ななな、なに言って…!!」
少し意地悪に笑う彼に、なんだか悔しい。
…キスしてなんて。
言えないなら、もういいや。
「ちょっと屈んで。」
私の言葉に同じ目線になってくれたところで、目をつぶり。
ちゅっとキスをした。
目を開けると、真っ赤な君の顔。
ああ、やっぱり。
「すごく好き。」