甘くて、苦くて、それが恋【超短編集】
学祭デートがしてみたい
「あーあ、学祭デート、したかったなあ。」
と、わざと隣のやつに、聞こえるように呟いた。
高校三年、最後の学祭。
隣にいるのは彼氏でも、女友達でもなくて。
腐れ縁のあいつ。
「先輩と、デートじゃなかったんですかー。」
私の呟きに、つまらなさそうにだけれども、ちゃんと言葉を返してくれる。
うん、イイヤツ。
一緒に行くの、こいつでよかった。
友達はみんな彼氏持ちだし。
「先輩には、こないだフラれましたー。」
三月に卒業した先輩とは、バレンタインから付き合ってたんだけど、遠距離が辛いという理由で破局。
「…そりゃ、どんまい。」
ほう、一応気遣ってくれるんだ、と思ったのも束の間。
急に右手を引っ張られ、少し駆け足に。
「ちょっ…。」
状況が掴めず、戸惑っている私に振り向き。
ニカッと笑い「デートって何したい?」と問う。
「えっと、お化け屋敷に行って、アイス食べて、劇と花火が見たい…!」
ほんとは、全部先輩としたかったこと。
だけど。
「全部、やっちゃおうぜ。」
と笑うこいつと、楽しむのも悪くないと思った。