甘くて、苦くて、それが恋【超短編集】
君のことが好きだった
「伝えたいことがあるから、屋上に来て。」
そう言われ、淡い期待をこめ、向かったが。
「これから、告白をしてくる。」
現実は甘くない。
「なんで、私に向かって宣言をするのかな。」
一応、聞いてみるものの。
答えはどうせ、背中を押せだの。
応援しろだの。
そんなこと。
なんていう、私の予想は。
大きく外れた。
「君のことが好きだから。
好きだから、聞いてほしかった。」
そう言って悲しそうに、さみしそうに。
私に微笑む。
こいつは、思ってたより、ずっと。
賢くて。
優しくて。
私のことを大切に想ってくれていて。
残酷なんだ。
「…私だって好きだよ。
もちろん、友達としてね。」
へらっと笑ってみたけど、きっとちゃんと笑えてないのは見抜かれた。
だけど、それには、ふれずに小さく「ありがとう。」と言うと、君は屋上の扉へ足を進めた。
…今はまだ、ちゃんと笑えなくてごめんね。
でも、明日にはいつもどおりに戻るから。
『好き。好きだったよ。』
君の背中にもう一度。
声にならない声で、呟いた。