甘くて、苦くて、それが恋【超短編集】
番外編【甘甘】
酔った勢いもたまには必要
「うえーい!!お酒って超うまいっすね!」
そう、まだお酒をあまり飲み慣れていない、彼女が満面の笑みでジョッキを持ち上げる。
しかし、まあ、いつも変なテンションになってるが、今日は特に飲みすぎだな。
「きらら、そろそろ水飲んどけ。」
コップを渡すと、酒を止められるのが不満なのか、眉をひそめ、不機嫌な顔に。
「てゆーか、麻生さんも飲んでくださいよー。」
えいえい、とジョッキを押し付けてくるのをやんわりと避ける。
「あのさ、毎回言うけど、俺酒強くないの。
酔っぱらい二人になったら帰れないでしょ。」
「…でも、たかやすくんと飲みたいな。」
上目遣いで、シャツを掴む。
なんてことを天然でしてくる、彼女。
あー、くっそ。
「じゃあ、わかった。その代わり俺ん家ね。」
「えっ…。」と、おそらく酔いとは別の理由で顔を赤らめる彼女を見て。
本当に、心底、シラフで良かったと思った。
【from:飲まないからこそ見える世界】