死を想う
残すもの、残されるもの
私の話を聞き終えると息子は不可思議な顔をしていた。おかしい様な悲しい様な、色々な感情が渾然一体となり自分でも何を思っているのか判断が付かなくなっている様だった。息子は私を見つめながら喘ぐ様に深呼吸をすると少し落ち着きを取り戻し、暗い口調で語りかけてくる。「父さん。俺はまだ父さんに生きていてほしいです。まだ、たくさんあるんです。親孝行も話したい事も一緒にやりたい事も数え切れないくらい一杯あるんです!俺の子供だって、じいちゃんじいちゃんっていつもなついてるじゃないですか!俺の妻だってまたお話聞きたいわっていってましたよ?俺たちを残していかないでください・・・」徐々にまた気持ちが高ぶってきたのか、声をあらげ果ては涙まで浮かべている。私は正直にいうと、こんな息子の様子を見てもわくわくドキドキする事はやめられなかった。何故ならもう一つだけ大きな理由があるのだ。息子には恥ずかしくていえなかったが、もし死後に続く世界があるのなら、きっと先に旅立った妻にも会える。やはり恥ずかしくて言う気にはなれないが、ドキドキしているのはその時を思い描いた為だろう。
だが息子の涙を見て思う事がない訳ではない。胸は苦しく、残してゆく事に少しだけ罪悪感もある。残すものも、残されるものも辛いものだなと、見慣れた天井を見つめながらしみじみと想う。
だが息子の涙を見て思う事がない訳ではない。胸は苦しく、残してゆく事に少しだけ罪悪感もある。残すものも、残されるものも辛いものだなと、見慣れた天井を見つめながらしみじみと想う。