死を想う

かけがえもなく

私は妻を抱きしめながら私達の結婚式を思い出していた。 あの時もこんな風に抱き合ったよな、と少しくすぐったい気持ちになる。 そういえば私達は教会で挙式したのだが、誓いの言葉のなかにこんな一節があったなと思い妻に語りかける。
「なぁ、私達の結婚式での誓いの言葉。死が二人を分かつまで、という部分があっただろ？私はもう一度誓おうと思う。死が二人を分かつとも、私はいつまでも君と共にいるよ。君は誓ってくれるかい？」少し不安に思いながら聞いてみる。
「当たり前じゃないですか、いついつまでもあなたと共にいます。」妻はにっこりと笑いながらそう言ってくれた。
私はもはや言うべき言葉もなく、ゆっくりと抱きしめなおすと二度目となる誓いの口づけをした。

もしかしたら今この幸せな時は末期の夢の続きなのかもしれない。幸せな夢が見せる幻なのかも・・・。
だが私はそれでもいいのだ。今この瞬間、流した涙も、抱きしめた妻の体も、そして私の心すらも、かけがえもなく暖かなのだから