もう一度だけ、キミに
―――…ねぇ、まだ好き、なの?
驚いたように目を見開きながらも、
視線を私の目から逸らすキミ。
密着した自身の背中から、
彼の少し早い心音が届く。
―――…まだ、好きかもな。
私と視線を交えることなく、
小さな声でそう言ったキミ。
―――…好きだよ、奈央。
―――…え、冗談?
―――うん。どう?好きって言われた感じ。
―――…冗談で簡単に言っちゃダメでしょ。
―――ごめんごめん。でも、ドキッてしたでしょう?
―――…知らない。
―――知らないって、お前なー…あれ?怒ってる?
そう言いながらも、
無邪気に笑うキミ。
残酷な程に、キミは
楽しそうに“あの子”の話しを
思い出しながら、笑って話す。
キミは、何時だって。
私の名前を呼んでいても
私を見詰めていても
瞳に私を映してくれない。