オレンジロード~商店街恋愛録~
「え? もしかして、浩太がスーさんだったの?」
「なっ! 違っ! 俺じゃない!」
『俺じゃない』と浩太は言うが、その焦りっぷりから事実は明白だった。
それでも浩太は「違う」とか「別人なのです」とか全力で否定していたが、喋れば喋るほどボロが出ていた。
「ってことは、ここに駆け付けてくれたのも偶然じゃないってこと?」
しかし、いつも見ててくれて、励まし、エールを送ってくれていた人。
「ねぇ、何で? 何で浩太が?」
そうだと確信して問う沙里に、ついに隠し通せないと判断したらしい浩太は、ふてくされた顔で目を落とした。
そして、何を言えばいいかというように少し沈黙した後で、
「そうだ。あんたの言う通りだ。あんたが言うところの『スーさん』は、俺だ」
獰猛な犬が飼い主に怒られてこうべを垂らしているような、浩太の姿。
しかし、沙里は責めるつもりで聞いているわけではない。
沙里は黙って浩太の次の言葉を待った。
「別に変な意味でやってたわけじゃない。俺はあることがきっかけで、あんたに恩を感じた。だからせめてもの恩返しにと思ってやってただけで」
「……恩?」
「些細なことだ。きっとあんたはあの日のことを覚えてない。でも、別に覚えてなくてもいいんだ。俺が勝手にそれを恩に感じてただけだから」
まったくわからなかった。
『えびす』以外で浩太と会った記憶がないから、浩太の言う『あの日』を思い出せない。
首をかしげて考える沙里に、しかし浩太はやっと顔を上げると、
「けど、俺がやってたことは、やっぱりみんなが言うように、ただのストーカーだ。磯野と変わんねぇ」
「………」
「だから、もう二度とあんたの迷惑になるようなことはしねぇから。『えびす』も辞めるし、あんたが嫌だと思うなら俺はこの町を出て」
「ちょっ、待って!」
思ってもみなかったその発言を、沙里は慌てて制した。
「あたし、別に今まで迷惑だと思ったことなかったし、それにバイト辞めるとかこの町を出るとか、突飛すぎるって」
「なっ! 違っ! 俺じゃない!」
『俺じゃない』と浩太は言うが、その焦りっぷりから事実は明白だった。
それでも浩太は「違う」とか「別人なのです」とか全力で否定していたが、喋れば喋るほどボロが出ていた。
「ってことは、ここに駆け付けてくれたのも偶然じゃないってこと?」
しかし、いつも見ててくれて、励まし、エールを送ってくれていた人。
「ねぇ、何で? 何で浩太が?」
そうだと確信して問う沙里に、ついに隠し通せないと判断したらしい浩太は、ふてくされた顔で目を落とした。
そして、何を言えばいいかというように少し沈黙した後で、
「そうだ。あんたの言う通りだ。あんたが言うところの『スーさん』は、俺だ」
獰猛な犬が飼い主に怒られてこうべを垂らしているような、浩太の姿。
しかし、沙里は責めるつもりで聞いているわけではない。
沙里は黙って浩太の次の言葉を待った。
「別に変な意味でやってたわけじゃない。俺はあることがきっかけで、あんたに恩を感じた。だからせめてもの恩返しにと思ってやってただけで」
「……恩?」
「些細なことだ。きっとあんたはあの日のことを覚えてない。でも、別に覚えてなくてもいいんだ。俺が勝手にそれを恩に感じてただけだから」
まったくわからなかった。
『えびす』以外で浩太と会った記憶がないから、浩太の言う『あの日』を思い出せない。
首をかしげて考える沙里に、しかし浩太はやっと顔を上げると、
「けど、俺がやってたことは、やっぱりみんなが言うように、ただのストーカーだ。磯野と変わんねぇ」
「………」
「だから、もう二度とあんたの迷惑になるようなことはしねぇから。『えびす』も辞めるし、あんたが嫌だと思うなら俺はこの町を出て」
「ちょっ、待って!」
思ってもみなかったその発言を、沙里は慌てて制した。
「あたし、別に今まで迷惑だと思ったことなかったし、それにバイト辞めるとかこの町を出るとか、突飛すぎるって」