オレンジロード~商店街恋愛録~
「あとで健介とレイジと結も来るから」


鼻歌混じりに酒を作るハルは、



「俺ら、仲間じゃん? 助け合って、たまにこうやって一緒に酒飲んでさ。いいもんだよな」


「なぁ?」とハルは焼き鳥を焼く浩太の肩を抱いて同意を求める。



沙里はこの町で、恋人はおろか、友達を作ることさえ半ば諦めていた。

けれど、ハルはこの商店街で暮らすみんなを『仲間』だと言った。


それは友達よりもずっと絆が深いもののように思えて、そしてそんな中に自分も入っているのだということを嬉しく思った。



しかし、『仲間』という単語に反応したのはどうやら沙里だけではなかったらしく、浩太も顔をうつむかせたまま、少し嬉しそうな表情をしていた。




浩太は今でも毎日のように、沙里に手紙と差し入れをくれる。

公認のストーカーとでも言えばいいか。


でも、前と少し変わったのは、沙里がその手紙に返事を書くようになったため、みんなには秘密の交流が生まれたということ。


沙里にとっては人生初の文通で、新鮮味もあり、とても楽しく思っている。

が、そろそろアドレスを聞いてメールに変えるべきかなとも思うし、たまには今までのお礼で逆に何かプレゼントをしたいとも思うようになった。



「そうだね。いいわよね、仲間って」

「だろ?」

「いい面も悪い面もわかってて、それでも相手を受け入れる。そこからもしかしたら恋愛にだって発展するかもしれないし」


沙里が笑うと、



「お? どうした? 何の話だ?」


ハルは目を丸くして、前のめりに聞いてくる。

が、「別にー」と、いつもの浩太の口調を真似て沙里が言うと、ハルは「何だ、そりゃ」と不思議そうな顔をした。


浩太の顔は見なかったが、きっとまた耳まで真っ赤にしているに違いない。



酒を飲んでいい感じに上機嫌になった沙里は、だけども今はもう少しだけ、浩太とはこのまま文通友達でいようと思った。











END

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