オレンジロード~商店街恋愛録~
稼いだ金のほとんどは、身なりを整えるためと、バイクにつぎ込んだ。



バイクは好きだった。

走っている時の無になれる感じと、かっこよくカスタムすることの喜び。


今思えば、それなりに真面目に仕事をして、人並みに趣味を持つくらいには人間らしくなれていたが、当時のレイジ自身はそんな自分の変化には気付けなかった。


バイクで走っていて事故をすればいつでも死ねるという妙な期待を持っていた。

死ぬための道具のわりにはカスタムするということの矛盾にまでは、頭がまわらなかったのだけれど。



とにかく、酒のためとバイクのためにのみ女を抱き、繰り返す毎日。




レイジはハタチでナンバーワンになった。




何を言い、どう動けば相手が喜び金を払うかなんて、もう考えなくても頭にも体にも染み付いていた。

でも、だからこそ、レイジの悪い虫がまた顔を出し始めた。



いい酒だってそれだけ飲んでいれば普通の味にしか感じなくなってしまうのは仕方がないこと。

おまけにナンバーワンになればその後光だけで勝手に客がつき、放っておいても向こうが勝手に股を開いてくる始末。


よくも悪くも慣れ過ぎてしまった上に、何もしなくてもいいのと同じようなもの。




糸が切れた。

ふっと、死にたいと強く思ったのだ。




真っ先に考えたのはバイクでの事故死だったのだが、時間と金を掛けてすべて自分の手でフルカスタムした愛車まで壊れてしまうようなことはさすがにできなかった。

だから、次に考えたのは、飛び降り自殺だった。


その時、たまたまテレビでサスペンスドラマがやっていて、そういうシーンがあったから、これにしようと思っただけなのだが。




自分の人生最期の場所を求めて繁華街を彷徨い歩いていた時、その出会いは後に運命とも呼べるものだった。
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