オレンジロード～商店街恋愛録～
女が酔っ払いたちに絡まれていた。

だからって、レイジは助けるつもりもなく、ただそれをじっと見ていただけだったのだが、その視線に気付いた酔っ払いたちが、レイジに「何見てんだよ」と絡んできた。


その時のやり取りは覚えていないが、とにかく酔っ払いたちはいなくなり、レイジは女にひどく感謝された。


「お礼をさせてください」としつこく食い下がる女。

これから死のうとしていたレイジは、すっかり気が削がれ、「じゃあ、店に来て」と適当にだけ言って名刺を渡した。



何の期待もしていなかったのに、翌日、本当に女は店にやってきた。



同い年で、お嬢様大学に通っている、雪菜と名乗ったその女。

外見も中身も清純という言葉がぴったりで、金も持っているみたいだから、これはいいカモになるなとレイジは思った。


折角、死のうとしていたのに、邪魔されたのだから、それ相応に金を落とさせてやろう、という腹黒い気持ちもあったのは確かだが。


恋愛経験すらほとんどない雪菜を落とすのは簡単だった。

ホテルに誘うまでもなく、普通に店の外で会って、たまに甘い言葉を織り交ぜながら普通のデートのようなことをすればいいだけ。



雪菜がレイジに恋心を抱くようになったのはそれからすぐのことだ。



でも、雪菜は他の女たちとは少々勝手が違った。

騙されているなどとは微塵も疑うことなく、本気でレイジの心配ばかりする。


正直、うざいと思った。


肉親にさえ邪険に扱われたレイジに、初めて向けられた真っ直ぐな想い。

レイジはそれがひどく怖かったのだ。



こんな女は初めてで、どう接していいかわからなくなったレイジは、とにかく雪菜を突き放そうと思った。



だから今まで以上に女を抱いたし、酒も飲んだ。

そうしたら雪菜は嫌になって自分から離れてくれると思った。


なのに、それでも雪菜はレイジを心配し続け、嫌ってはくれなかった。
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