オレンジロード~商店街恋愛録~
どうしてこの女は、それでも自分を愛そうとするのか、と。


何度も声を荒げた。

酒の勢いに任せて雪菜を殴ったこともあった。



愛だ、恋だと、普段はそれを商売にしている自分がと思うと、滑稽な話なのだけれど、だから余計、イライラした。




愛なんてまがいものだ。

と、思う反面、心のどこかではそんな雪菜の気持ちを信じてみたいとも思うようになって。


でも、自分がそんな風にはなれないことは、レイジ自身が一番よくわかっていたから。


今度こそ、死のうと思った。

あの日、本当なら俺はもう死んでいたのだから、と。




レイジはほとんど衝動的に、自宅マンションのベランダから飛び降りた。




しかし、思惑に反し、レイジは病院のベッドで目を覚ましたのだ。

後から聞いた話では、落ちた場所には木々が植えられていて、それがクッションになったとかどうとからしかったが、とにかくその時のレイジは死ぬことさえも奪われたような絶望感に襲われていた。


そこに駆け付けてきたのが雪菜だった。


雪菜は泣いていた。

泣きながら「どうしてこんなことをしたのよ」と繰り返していた。




「全部、お前が悪いからだよ。お前さえいなければ」


声を絞ったレイジに、雪菜は「ごめんね」とだけ言って、また泣いたのだ。



腹立たしさとか、悔しさとか、苛立ちとか、体中の痛みとか。

色々なものがごちゃ混ぜになっていたレイジ自身も、涙が溢れてきて。


自分で覚えている限り、泣いたのなんて初めてだった。
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