オレンジロード~商店街恋愛録~
しかし、レイジのそんな思いとは裏腹に、話はふたりの間だけでは納まらなくなっていた。

交際がまわりに知られるようになったことで、当然、雪菜の親にも知られてしまった。


特に雪菜の父は厳格な人で、もちろんレイジとの交際など大反対だった。


施設で育ち、ホストをしていた過去があり、娘の未来を阻む男。

言われていることは事実で、誰が聞いたって許せるはずもないだろうけど。



「それでも別れるつもりはありません」


何度も何度も、ふたりで頭を下げた。

雪菜の父に認めてもらいたい一心で、レイジは誠心誠意で雪菜の家に通い詰めた。


誰かに反対されたからって別れられるほどの気持ちではなかったから。



しかし、そんなレイジの想いが伝わるはずもなく、



「雪菜が大学を卒業したら、しかるべき相手と結婚させる」


と、雪菜の父は言ったのだ。


正直、レイジは頭が真っ白になった。

もちろん雪菜にとっても寝耳に水で、「そんなの嫌だ」と繰り返したのだけれど。



それでも雪菜の父の考えが変わることはなく、ふたりで何度も話し合った末に、



「もう、どこか遠くに逃げるしかない」


という、結論に達した。


冷静に話し合っていたように思うが、それでもふたりは焦り、追い詰められていた気がする。

が、そこまですれば、雪菜の父は諦め、ふたりを認めてくれるかもしれないという淡い期待もあったのは確かだ。



とにかくその頃のふたりには、それしか手がないと思い、行動に移した。





しかし、この町に来て一年半。

雪菜の父からの連絡は、一度もない。


諦めて認めてくれたのか、それとも諦めたからこそ見放されたのか。

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