オレンジロード~商店街恋愛録~
「さぁ、どうでしょう」
雪菜は曖昧にほほ笑んで、受け流しておいた。
自分のことを聞かれるのも、それを話すもの、あまり好きではない。
と、いうよりも、詮索されては困ることばかりだから。
「あ、そうだ、今度、その彼、連れて来なさいよ。私も雪菜ちゃんの恋人を見てみたいわ」
「はい。またいつか」
雪菜は先ほど同様、ほほ笑んで、適当に受け流しておく。
あの人はいつもよくこのお店の前を通ってますけどね。
とは、口が裂けても言えないからだ。
雪菜がショーケースにバラを並べていると、「こんにちはー」と、人が入ってきた。
「『長谷川酒店』でーす。ご注文のものをお届けに上がりましたー」
レイジが酒瓶のケースを持ってくる。
斉木夫人は「あらやだ」と、急いで奥から財布を持ってきて、
「わざわざごめんなさいね。こんなに頼んで、重かったでしょ? 今日、主人が同級生を呼んでうちで宴会をするって言うから」
「いいんですよ。すぐそこだし、それに同じ商店街のよしみじゃないですか。こんなの手間でもありませんよ」
人のいい笑みで返したレイジは、代金を受け取り、斉木夫人に伝票を渡していた。
つい先ほどまで、ご主人との思い出でのろけていたはずの斉木夫人だが、今は目の前の好青年との他愛ない会話で頬を赤らめている。
何だかなぁ、と、雪菜は思ったが、作業の手は止めなかった。
「これからも、何かあればいつでも言ってくださいね。じゃあ、ありがとうございました」
折り目正しく頭を下げたレイジは、そのまま店を出て行った。
斉木夫人はしばらくそれを見送った後、「ほんとに素敵な男の子よねぇ」と、熱っぽい息を吐く。
この商店街の奥さま方にとって、レイジは身近にいるアイドルみたいなものらしい。
雪菜は斉木夫人の呟きを聞かなかったことにし、作業の終わったショーケースのガラス戸を閉めた。
雪菜は曖昧にほほ笑んで、受け流しておいた。
自分のことを聞かれるのも、それを話すもの、あまり好きではない。
と、いうよりも、詮索されては困ることばかりだから。
「あ、そうだ、今度、その彼、連れて来なさいよ。私も雪菜ちゃんの恋人を見てみたいわ」
「はい。またいつか」
雪菜は先ほど同様、ほほ笑んで、適当に受け流しておく。
あの人はいつもよくこのお店の前を通ってますけどね。
とは、口が裂けても言えないからだ。
雪菜がショーケースにバラを並べていると、「こんにちはー」と、人が入ってきた。
「『長谷川酒店』でーす。ご注文のものをお届けに上がりましたー」
レイジが酒瓶のケースを持ってくる。
斉木夫人は「あらやだ」と、急いで奥から財布を持ってきて、
「わざわざごめんなさいね。こんなに頼んで、重かったでしょ? 今日、主人が同級生を呼んでうちで宴会をするって言うから」
「いいんですよ。すぐそこだし、それに同じ商店街のよしみじゃないですか。こんなの手間でもありませんよ」
人のいい笑みで返したレイジは、代金を受け取り、斉木夫人に伝票を渡していた。
つい先ほどまで、ご主人との思い出でのろけていたはずの斉木夫人だが、今は目の前の好青年との他愛ない会話で頬を赤らめている。
何だかなぁ、と、雪菜は思ったが、作業の手は止めなかった。
「これからも、何かあればいつでも言ってくださいね。じゃあ、ありがとうございました」
折り目正しく頭を下げたレイジは、そのまま店を出て行った。
斉木夫人はしばらくそれを見送った後、「ほんとに素敵な男の子よねぇ」と、熱っぽい息を吐く。
この商店街の奥さま方にとって、レイジは身近にいるアイドルみたいなものらしい。
雪菜は斉木夫人の呟きを聞かなかったことにし、作業の終わったショーケースのガラス戸を閉めた。