オレンジロード~商店街恋愛録~
勝手な人だなと思った。

贈る相手が女性か男性かだけでも違うというのに。


口を尖らせた雪菜は、



「じゃあ、ほんとに私が好きなように作っちゃうよ?」


と、声を潜めた。

レイジは「うん」と言うだけで、そのまま店内を徘徊し始めた。


何だかなぁ、と、思いながらも、雪菜はショーケースの前で花束のイメージを考える。



何だかよくわからないが、レイジがいいと言ったんだから、こうなったらもう、私が欲しいと思うように作ってやる。


真っ赤なバラは絶対に何本か入れたい。

あとは、かすみ草といくつかの安い花でかさ増しすれば、手頃な値段で見た目も可愛くなるはずだ。



雪菜は選び取ったそれらの形を整え、手早く綺麗にラッピングした。

斉木夫人はレイジに目配せした後、雪菜に「それが終わったら上がってね」と言い、奥に引っ込んでしまった。


店内をゆっくりと一周して戻ってきたレイジに、



「こんな感じでどう?」


と、作った花束を見せた。



「うん。いいんじゃないかな」


レイジは適当な台詞でうなづいて、「いくら?」と聞いてきた。

雪菜は肩を落とし、会計を済ませた。


できがった花束を受け取るレイジに、雪菜は、



「誰に贈るの?」


と、半分、不貞腐れたように小声で聞いた。

すると、レイジはふっと笑みをこぼし、



「俺の可愛い恋人に」


そう言って、レイジは、今しがた雪菜が渡したばかりの花束を、また雪菜の胸に戻した。

驚いて目を見開いた雪菜に、レイジは、
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