オレンジロード~商店街恋愛録~
結は夕食の後片付けを終えて、スニーカーを履いて家を出た。
仕事を辞めて以来、ぐうたら生活をしていたら、3キロも太ってしまったため、先週から散歩をすることにしたためだ。
まぁ、実際は、ダイエット目的半分、家に居辛いという気持ち半分なのだが。
毎日、同じコースではさすがに飽きるので、結は徘徊するように思ったままの道を歩くようにしている。
そしてそれは、商店街の裏にある公園に差し掛かった時のこと。
「うっわー、懐かしい。ここまだあったんだぁ。しかも、昔と全然、変わってないし」
そうそう、中学生の時、ここで、初めて付き合ったカレシと日が暮れるまで一緒にいて、他愛ない話をしてたっけなぁ。
あいつ、今、どうしてるかなぁ、なんて、思い出を辿るように公園内に入ってみたら、
「……ん?」
かすかに、子供が泣いているみたいな声が聞こえた。
結は怪訝に眉根を寄せ、もう一度、よく耳を澄ましてみた。
みゃあ。
「違う! 子供じゃなくて猫だ!」
慌てて声のする方に向かい、しゃがんで茂みを掻き分けた。
「あ……」
段ボール箱の中に、子猫が一匹。
しかも、その体は痩せ細り、子猫はかすれた声を漏らしながら、震えていた。
結は子猫を抱き上げる。
「どうしたの? 捨てられたの?」
可哀想でたまらなかった。
見つけた以上、もう放っておくことなんてできない。
とにかく何か食べ物を与えて、それから、それから。
結は子猫を落とさないようにしっかりと胸に抱き、立ち上がってきびすを返した。
慎重に、でも早足に、商店街を突っ切るように歩く。