オレンジロード~商店街恋愛録~
浩太の所為で場の空気がシラけてしまい、沙里がもう帰ろうかなと思っていた時、店の引き戸がガラガラと開いた。
のれんをくぐって入ってきたのは、ここで顔馴染みになった磯野だった。
「あー、いらっしゃい」
言いながらも、店長は相変わらずのように熱燗を手放さない。
「こんばんわ」
でも、さすがは馴染み客というべきか、店長のそんな姿も慣れたものの磯野は、笑うだけ。
で、カウンターに座っていた沙里の姿もいつもの通りらしく、磯野は笑顔そのままに、「ここいい?」と、沙里の隣に腰を下ろした。
「久しぶりだね、磯野さん」
「そうだね。僕は昨日も来たんだけど、サリーちゃんと会わなかったよね」
「あぁ、あたし昨日、伝票の整理して疲れてたから、真っ直ぐ家に帰ったんだよね」
馴染み客同士の緩い会話。
『サリーちゃん』と『磯野さん』なんて、アニメみたいな組み合わせだけれど。
店長の代わりに、無言の浩太が、磯野の前にお通しとおしぼりを出した。
「忙しそうだね、サリーちゃん」
「まぁね。でも、教師さんよりはマシだと思うけど」
「やめてくれよ、『教師さん』だなんて」
磯野は柔らかく笑った。
磯野はこの近くにある小学校で教諭をしているらしい。
初めは公務員だなんて羨ましいとしか思わなかったが、その仕事量を聞いた時には驚いた。
でも、磯野は一度として大変そうな素振りを見せたことはなく、それどころか優しそうな人柄に溢れていて、沙里は、あたしが子供の頃にこういう先生と出会えてたらなぁ、と、会う度に思わされるのだ。
「サリーちゃんは休みの日とか何してるの?」
「んー。昼過ぎまで寝てることが多いかな。あたし、やばいよね」
「誰かと遊びに行ったりしないの?」
「しないなぁ。こっちにあんまり友達っていないし」
「そうなんだぁ。僕と同じだね。僕も地元はここじゃないから、仲のいい人がいなくて。プライベートで話をするのなんて、ほんとサリーちゃんくらいだからね」
のれんをくぐって入ってきたのは、ここで顔馴染みになった磯野だった。
「あー、いらっしゃい」
言いながらも、店長は相変わらずのように熱燗を手放さない。
「こんばんわ」
でも、さすがは馴染み客というべきか、店長のそんな姿も慣れたものの磯野は、笑うだけ。
で、カウンターに座っていた沙里の姿もいつもの通りらしく、磯野は笑顔そのままに、「ここいい?」と、沙里の隣に腰を下ろした。
「久しぶりだね、磯野さん」
「そうだね。僕は昨日も来たんだけど、サリーちゃんと会わなかったよね」
「あぁ、あたし昨日、伝票の整理して疲れてたから、真っ直ぐ家に帰ったんだよね」
馴染み客同士の緩い会話。
『サリーちゃん』と『磯野さん』なんて、アニメみたいな組み合わせだけれど。
店長の代わりに、無言の浩太が、磯野の前にお通しとおしぼりを出した。
「忙しそうだね、サリーちゃん」
「まぁね。でも、教師さんよりはマシだと思うけど」
「やめてくれよ、『教師さん』だなんて」
磯野は柔らかく笑った。
磯野はこの近くにある小学校で教諭をしているらしい。
初めは公務員だなんて羨ましいとしか思わなかったが、その仕事量を聞いた時には驚いた。
でも、磯野は一度として大変そうな素振りを見せたことはなく、それどころか優しそうな人柄に溢れていて、沙里は、あたしが子供の頃にこういう先生と出会えてたらなぁ、と、会う度に思わされるのだ。
「サリーちゃんは休みの日とか何してるの?」
「んー。昼過ぎまで寝てることが多いかな。あたし、やばいよね」
「誰かと遊びに行ったりしないの?」
「しないなぁ。こっちにあんまり友達っていないし」
「そうなんだぁ。僕と同じだね。僕も地元はここじゃないから、仲のいい人がいなくて。プライベートで話をするのなんて、ほんとサリーちゃんくらいだからね」