オレンジロード~商店街恋愛録~
「どうしてサリーちゃんは僕を頼ってくれないの? ずっと心配してたのに。僕がこんなにきみのことを考えているのに、なのに、どうしてきみは」
いきなり一気にまくし立てた。
が、突然のことすぎて、沙里は何を言われているのかすぐには理解できなかった。
呆然としたままの沙里を、それでもまだ磯野は揺すりながら、
「僕の好意には気付いてたはずでしょ? なのに、きみはいつも受け流すような態度ばかりだ。僕のことが嫌いなの? 僕の何がダメなの?」
「離してよ!」
沙里はどうにかその手を振りほどいた。
普段の磯野の姿から想像もできないようなその形相。
そこで、はたと、先日のスーさんからの手紙の内容を思い出し、『危険』というのはこのことだったのかと思ったが、もう遅い。
「い、磯野さん。落ち着いて。まずは落ち着いて話をしようよ? ね?」
未だに何が何なのかは理解できないが、それでも本能的に、これがとてつもなく危険な状況であることはわかった。
とにかくまずは逃げなければと足を引くが、それを許さないとばかりに磯野は再び距離を詰めてきた。
「僕は公務員で、社会的にも認められた存在だ。おまけに保護者や生徒たちからの信頼も厚い。僕はたくさんの人間に好かれ、頼られている」
「………」
「それなのに、きみみたいな何の取り柄もない、つまらない女をわざわざ口説いてやったのに、どうして避けられなければならない? おかげで僕のプライドは傷ついた」
あぁ、つまりはそれが本音だったのか。
先ほどまでは恐怖で体がガチガチだった沙里だが、急に目の前の男がちっぽけに思えて、すぐに怒りに変わった。
「何それ、ふざけんじゃないわよ。あんた、何様?」
磯野がこんな人間だったことも見抜けず、結婚するならこういう人だろうな、なんて思っていた自分が馬鹿みたいで嫌になる。
「別に口説いてくれとか頼んでないし。確かにあたしは何の取り柄もないかもしれないけど、あんたみたいなやつと付き合うくらいなら、一生ひとりでいる方がマシだから。こっちから願い下げだっつーの」
「何だと?」
磯野は眉を吊り上げ、今度は沙里の腕を掴んで引く。
いきなり一気にまくし立てた。
が、突然のことすぎて、沙里は何を言われているのかすぐには理解できなかった。
呆然としたままの沙里を、それでもまだ磯野は揺すりながら、
「僕の好意には気付いてたはずでしょ? なのに、きみはいつも受け流すような態度ばかりだ。僕のことが嫌いなの? 僕の何がダメなの?」
「離してよ!」
沙里はどうにかその手を振りほどいた。
普段の磯野の姿から想像もできないようなその形相。
そこで、はたと、先日のスーさんからの手紙の内容を思い出し、『危険』というのはこのことだったのかと思ったが、もう遅い。
「い、磯野さん。落ち着いて。まずは落ち着いて話をしようよ? ね?」
未だに何が何なのかは理解できないが、それでも本能的に、これがとてつもなく危険な状況であることはわかった。
とにかくまずは逃げなければと足を引くが、それを許さないとばかりに磯野は再び距離を詰めてきた。
「僕は公務員で、社会的にも認められた存在だ。おまけに保護者や生徒たちからの信頼も厚い。僕はたくさんの人間に好かれ、頼られている」
「………」
「それなのに、きみみたいな何の取り柄もない、つまらない女をわざわざ口説いてやったのに、どうして避けられなければならない? おかげで僕のプライドは傷ついた」
あぁ、つまりはそれが本音だったのか。
先ほどまでは恐怖で体がガチガチだった沙里だが、急に目の前の男がちっぽけに思えて、すぐに怒りに変わった。
「何それ、ふざけんじゃないわよ。あんた、何様?」
磯野がこんな人間だったことも見抜けず、結婚するならこういう人だろうな、なんて思っていた自分が馬鹿みたいで嫌になる。
「別に口説いてくれとか頼んでないし。確かにあたしは何の取り柄もないかもしれないけど、あんたみたいなやつと付き合うくらいなら、一生ひとりでいる方がマシだから。こっちから願い下げだっつーの」
「何だと?」
磯野は眉を吊り上げ、今度は沙里の腕を掴んで引く。