僕と三課と冷徹な天使 ~2015バレンタイン
「でもさ、灰田は別に甘いもの
 好きじゃないでしょ。
 チョコもらってうれしいの?」

笑い終えたコオさんが言った。

何となく喜んでいたけど、
確かにそうだなあ。

うーん、でも・・・

・・・あ、そうか。

考えてて気づいた。

チョコがほしいわけじゃない。

「チョコをくれる気持ちが嬉しいんです。
 チョコを選ぶときに、少しは
 自分のことを思ってくれたのかなって」

うん、そうだ。

だからコオさんからほしかったんだ。

コオさんに僕を想ってほしかった。

一瞬でいいから。

「まあ、コオさんとあっこさんみたいに
 みんなにあげないといけないと
 いちいち考えてられないと思いますけど・・・」

念のためフォローを入れるが
コオさんは難しい顔をしている。

まずいこと言ったかな・・・

「・・・なんか私、やっちまった気がする」

え?何を?

僕がやっちまったんじゃなくて?

「よっしーもじゅんも、くれくれうるさいから
 とにかくあげればいいやと思ってたけど・・・
 日ごろの気持ちを伝えるチャンスだったなあ」

静かに話すコオさん。

「・・・灰田の分は
 ちゃんと自分で選べばよかった」

ため息をつきながら言った。

言葉と表情でコオさんの気持ちが
伝わってくる。

なんかもう・・・

「・・・その気持ちだけでうれしいです」

僕はそれしか言えなかった。
< 10 / 13 >

この作品をシェア

pagetop