結婚してください
「この前は悪かったね。
亜紀の親友らしいね、君は。
今、彼女は体調崩してしまっている。少し会ってもらえないか?」
亜紀の部屋まで案内した。気は進まないがこの男と亜紀を二人だけにすることにした。
柴崎からは止められたが、二人の時間を大事にしてやりたいと俺からの詫びの気持ちだ。
俺たちは廊下でしばらく様子を伺っていた。
すると、中から賑やかな声が漏れてきたのを聞いてまずは一安心しその場を離れた。
午後の食事も手付かずのままだったが、夕方あの男が帰っていった後、食器を見ると全てなくなっていた。
柴崎が亜紀に尋ねたところあの男と一緒に食事をしたとの事だった。
亜紀が食事をしたと聞いて俺は安堵していた。
その日は、せっかく恋しい男との時間を持てたんだ俺の顔は見たくないだろうと亜紀には会わなかった。
それから亜紀が元気になるように数日続けて男に来てもらっていた。すると、驚くほどに亜紀の体調は良くなりすっかり元気になっていた。
見違えるほどに生き生きとした顔になり元気な姿に、少し苛立ちを覚える。
外の空気を吸おうとあの男と一緒に庭を散歩していた亜紀。そんな亜紀の姿を見ていると、これまでの死んだような表情しかしなかった亜紀がにこやかに光り輝く少女のように立っている。
この屋敷では見れない亜紀の姿だ。