結婚してください
亜紀の体調がすっかりよくなったのはそれからしばらくしてのこと。
梅雨も本番になり毎日雨に悩まされてしまう。暗い空を見るとまるで俺の心の中を映し出しているかのようだ。
それでも刻々と時間は過ぎていく。
俺は意を決して亜紀と話し合うことにした。
亜紀の部屋を訪れた俺を以前のような煙たい態度で迎えることはなくなった。
「どうぞ。何か用なの?」
前ほど警戒心もなくなり話しやすくなったのは事実だ。
だからと言うわけではないが、今のうちにケリをつけようと思った。
俺は婚姻届をテーブルの上に置いた。
そして椅子に座り、亜紀にも座るように促した。
「それは・・・・・」
亜紀はやはり嫌そうな顔をしている。
「条件をつける。」
「条件?」
そう、亜紀にとっては暗闇の世界へ放り投げられる気分だろう。だから少しでも明るい光になるものを与えなくては、きっとこの世界では生きてはいけないだろう。
その時のことを考えると俺は恐ろしくなる。だから、条件を付けるんだ。