結婚してください
「これは逃げられる婚姻ではないのは分かるだろう?」
亜紀は黙ったままピクリとも動かなくなる。想像していた通りだが。
「サインをしてくれたら、実家へお前を戻す。そして、学校もお前が行きたかったあの高校へ転校させる。」
「え?!」
驚きもするだろう。入籍後に別居をするわけだし学校も別々。俺たちは夫婦になって別れるのだから。
「その代わり、藤堂家のパーティへは卒業まではお前を参加させないが、毎週末だけはここで一緒に過ごす。これが条件だ。どうだ?」
亜紀には随分と良い条件のはずだ。
「俺は離婚するつもりはないが、お前が男を作ったからと文句は言わない。妊娠さえしなければ好きにするが良い。」
この条件ならこいつも少しは考えるだろう。
逃げられないんだよ。俺たちは。この家に決められたことは、俺たちがどう足掻いてもどうもできないんだ。
「サインしてくれないか?
俺にはお前が必要だし、お前には俺が必要なはずだ。」
そう、この藤堂家がある以上俺たちはそういう運命なんだよ。
「分かった。でも、本当にその条件大丈夫なんでしょうね? 親にはどう説明するの?」
「俺に任せておけ。お前に悪いようにはしないよ。」
「分かった。サインする。」
亜紀は条件を呑んでくれた。
俺たちは婚姻届にサインするとお互いの道を進むかのごとく俺たちは別れた。