結婚してください
学校のランチタイム。みんなで教室でワイワイ楽しくおしゃべりしながらご飯を食べる。
多くの生徒たちはお弁当持参。机を囲んで一緒に食べる。
そんな些細なことが幸せに感じてしまう。
「亜紀! 旨そうじゃんそれ♪ 私のおかずと替えっこしない?」
「あ、じゃあ、その玉子焼きとね♪」
「わぁお! いっただき!」
みんなで、気になるお弁当のおかずを替えっこして食べるのも新鮮だ。今まで出来なかったこと。
これまでは、毎日、英輔と二人で食べていた食事。
そうだ・・・英輔は今誰と食べているのかな? もしかして藤沢愛華? だとしても私には文句言う資格はない。
「なあに? どうしたの? 亜紀?」
「もしかして旦那様のこと考えていた?」
「え? 違うよ!」
いきなり英輔の話題を振られドキッとした。確かに今英輔のこと考えていた。 今までにないこと。でも、私の我が侭で申し訳ないことをしたと思ったんだ。
でも、私がいないことで英輔も自由に好きな人と過ごせるのだから、英輔も幸せなんだよね?
お互いにこんな幸せがあってもいいよね?
「へー 山崎って亜紀の旦那様見たことあるんだ。」
「ああ、あるよ。すっごいイケメン。背が高くて格好良い人。」
外見はそうだけど。でも、どこか冷めている人間味のない人。だから、サインする気がなかったけど。でも、あんな条件出されたら嫌とは言えなくなる。
私のことを考えてくれたのが嬉しかった。だからサインできたのだと思う。あの時だけは温かく感じたから。