結婚してください
「前は何も言ってくれなかったよね?」
「あれは、ちょっと、言葉に詰まって。その、なんて言ったらいいのか分からなくて。」
そんなセリフって飽きるほど言ってきたと思ってたけど。そうでもないのかな? 英輔でもあまり免疫ないのかな?
「うん、それでいい。亜紀、可愛いよ。」
え・・・と。可愛い?! 初めて言われた?!! どうしたの? 英輔、熱でもあるんじゃ???
私があまりにも驚いた顔をするものだから英輔に笑われてしまった。
「言う時は正直に言うよ。じゃあ、着替えておいで。」
こっちが恥ずかしくなるんだけど? 家を出てからの英輔はちょっと変?
制服に着替えた私は英輔が待っている部屋へと案内される。
「せっかくだから欲しい服あれば買っていく?」
「服を? え・・・と、私には勿体無いから。」
こんな高級店で私の普段着を買うって言うのかな? それあまりにも贅沢すぎる。
それに、
私には、こんな高級服似合わないよ・・・
「亜紀のクローゼットにはあまり服がなかったように思うけど?
好きなデザイン選べよ。」
そう言うと、お店のスタッフの人にいろんなデザインの洋服を持ってきてもらった。
今年流行のイージーオーダーのサンプルを持ってきてもらった。
私には高級すぎて不釣合いだよ。
「藤堂様の奥様ですから、このくらいシックでもよろしいかと。」
「そうだよね・・・・亜紀は可愛いのも似合うけど、シックな装いも似合うね。」
そうか・・・私は藤堂家の嫁なんだ。いつまでも田所亜紀ではいけないんだ。