結婚してください
食事を済ませると自宅まで送ってくれた。
「たまにはこんな食事も良いね。」
「・・・そうね」
「誘っても良いかな?」
こういう場合なんて返事したら良いんだろう。「はい」で良いの?
それとも・・・・
私が悩んでいるように見えたのだろう、英輔は何も言わずに帰っていった。
入籍したのに夫婦らしい会話は全くない私たち。それどころか顔を合わすことさえ週末だけと冷めている間柄。
形だけの夫婦。だから、少しでもそれらしく見えるように努力しているのだろうと思う。
英輔は、私と違って藤堂家の跡取りとしての自覚がある。だから、跡取りとして私をあの家に近づけようと努力しているんだと思う。
多分、だから私に対して優しく出来るのだと思う。
俗に言う誘導作戦ってことなんだろうね。
そう考えると、英輔のあの優しさに対して引け目を感じるとか臆することはないんだ。