結婚してください
私からのメールを確認した英輔は私が義父との食事を断るとは思っていなかったらしい。
「亜紀様はお断りになられたのですか?」
「ああ、ダメだった。父との食事だからと思ったけど、やっぱり俺に会う気はないんだろう。」
「そうですか。他に何か良い方法を考えましょう。」
「いや、もういい。無理して会わなくても。亜紀には亜紀の生活がある。しばらく会わないほうが良いのかもしれない。」
「本当にそれでよろしいのですか?」
「どうせ俺たちは離婚はできない。人生は長いんだ、最初の数年間くらい大丈夫だろう。」
「本当にそう思いになられますか?」
「じゃあ 俺にどうしろと言うんだ?!」
女主を失くした藤堂家の屋敷は冷え切っていた。
英輔も家では自室に篭ることが多くなり柴崎さんとの言い争いも増えてきていた。
けれど、家を出て自由気ままな生活をしている私には藤堂家の事情など知りもしなかった。